デッドリフトはどこを鍛える種目?
デッドリフトは背中を鍛える種目と捉える方が多いと思います。
実際、デッドリフトは体幹を固定した状態でバーを床から持ち上げる動作を行うため、背中の筋肉はアイソメトリック(筋肉が伸張や収縮しない状態)に働きます。
しかし、同時に体幹が固定していれば、床からバーを股関節当たりまで引き上げるために、脚の筋肉を動員する必要があります。
もし、デッドリフトで脚に刺激が入らないという人は、背中の筋肉だけで上げている上に、腰にも負担がかかってしまいます。
デッドリフトをやるといつも腰を痛めるという人は、正しくデッドリフトを行えていません。デッドリフトは背中と同時に脚の筋肉も鍛えることのできる素晴らしい種目です。
よくある間違い
デッドリフトはベンチプレスと違って動作が複雑で一度に多くの筋肉を動員する種目です。
動員する筋肉が多いとその分、疲れやすく、キツイため楽をしようとフォームが崩れる恐れがあります。
例えば、引き上げる時に背中が丸まってしまう人がいますが、これは脚の筋肉(特にハムストリングス)が弱い人が、無理やり引き上げようとして、背中を丸めて行おうとします。
背中を丸めることで脚を使って持ち上げる距離を短くできますが、背中を丸めるということは腰が支点となるということで、バーベルの負荷が腰に集中してしまい、結果的に腰を痛めることになります。
また、フィニッシュ時(バーを完全に持ち上げ、上体が地面と垂直になった状態)に背中を過度に反らす人がいますが、これも腰を痛めるだけです。
フリーウェイトでの重要な点は「重力は常に地面に垂直=鉛直方向にかかる」ということです。
つまり、鉛直方向に平行に動作することで筋肉へ負荷をかけることができるため、デッドリフトでフィニッシュ時に背中を反らしても背中の筋肉への刺激よりも腰への負担の方がよっぽど大きいため、反らす必要がありません。
これもよくある間違いですが、バーベルを地面に下す時に勢いよく下ろし、バウンドを利用して次のレップを行う人もいますが、これも止めましょう。
確かに、バウンドを利用すればバーベルを持ち上げる開始地点(原点)が少し上になる上に、作用・反作用の関係でバーベルに上向きの力が働くため、持ち上げやすくなりますが、その分力を十分に発揮できません。
これだと、目的がレップ数を稼ぐことになってしまいますが、本来の目的は筋肉へ負荷をかけ、筋肥大や筋力アップを目的に行います。
もし、目標レップ数に到達できなくても反動を使わず、しっかりと行えていれば十分です。あまりにもレップ数が少ないのであれば、プレートを軽くすればいいだけの話です。
・腰を丸めたり、フィニッシュ時に背中を反らさない!
・バウンドを利用しない!
足幅、手幅、握り方、呼吸
デッドリフトは基本的には脚幅は肩幅よりも狭く、腰幅ぐらいが良いとされています。
つま先は外側に30°ぐらい、最低でも膝と同じ向きにします。
手幅は脚の外側になるように、肩幅ぐらいかそれより少し広くとります。
自分で持ち上げやすい幅を探してみてください。高重量になればバーを握り続けるのもキツくなるので、高重量でも扱える手幅にしておきましょう。
握り方はプロネイトグリップで親指をバーに巻き付けるサムアラウンドグリップで握ります。
高重量だと握力に限界がきて、オルタネイトグリップで握る人もいますが、左右で背中にかかる負荷に差ができるため、オルタネイトグリップで握る人はセットごとに左右の握りを変えるのが良いと思います。
高重量でもプロネイトグリップで行いたい人はパワーグリップなどの握力を補助するアイテムを使って行うのがおすすめです。
持ち上げる前に息を吸い込み、腹圧を高めておきます。こうすることで背中が丸まらないようにすることができます。
バーベルを地面に付けたら息を吐き、次のレップの時にもう一度腹圧を高めます。
・つま先は外側に30°程度向ける!
・手幅は肩幅程度に!
・腹圧を高めて体幹を固定する!
一連の動作
デッドリフトは膝関節、股関節を含む動作で行います。動きが複雑なうえに、間違ったフォームで行うと腰を痛めたり、そもそもバーベルを持ち上げることができないこともあります。
正しいフォームを身に付けるまでは無理に高重量を行わないようにしましょう。
フィニッシュまでの動作
先程も述べたように、デッドリフトは体幹を固定した状態でバーベルを床から持ち上げ、身体が一直線に地面と垂直になったら、フィニッシュです。
当たり前ですが、バーベルの軌道は常に鉛直方向です。
床から股関節当たりまで持ち上げる時は、脚の筋肉を使います。この時の背中の筋肉は常にアイソメトリックです。背中が曲がらないように維持します。
膝がある程度伸びたとき、次は股関節を前に押し出すようにします。この時も常に背中の筋肉はアイソメトリックです。
股関節を前に押し出そうとすれば、自然と上体が起き上がり、フィニッシュ時には地面に垂直に身体が一直線になるようにします。
フィニッシュ時にお尻を引き締める意識で行うと股関節の進展になるので自然と上体が起き上がります。
この時、先程も述べたように背中を過度に反らさないようにしましょう。デッドリフトでの背中の筋肉の目的は収縮ではありませんので。
フィニッシュ後の動作
フィニッシュ後の動作はフィニッシュするまでの動作を逆から行うだけです。
つまり、股関節を後ろに移動させ、上体が倒れ、膝を曲げながらバーベルを地面に下ろします。
地面にバーベルが下りた時、必ず始める前のセットポジションとフォームになるようにしてください。
バーベルが始める時より前にあったり、膝が伸びた状態で地面にバーベルが付いてしまったとなれば、バーベルの軌道やフォームが崩れたことになり、怪我に繋がる恐れがありますので、初めと終わりは必ず同じにしましょう。
レップ間での準備
先程も述べましたが、バーベルのバウンドを利用して次のレップに移ることはやめましょう。
必ずバーベルを地面に付けたら、一度静止し、腹圧を再度高めたら、セットポジションを取り、開始地点から再度持ち上げます。
常に1レップ目だと思って行うと良いです。ベンチプレスやスクワットと違い、デッドリフトはバーベルを持ち上げる時に負荷がかかる種目です。
そのため、急いで次のレップを行う必要がありません。だからと言って、レップ間に長めのインターバルをとる必要はありません。
目安は5秒以内に次のレップを行いましょう。
・バーベルを下ろす時は逆の順番で行う!
・レップごとにセットポジションを取り直す!
補助装備
デッドリフトもスクワット同じように脚の筋肉を使います。そのため、デッドリフトでも靴底が平らなウェイトシューズなどを活用することをおすすめします。
特にデッドリフトは0から一気に100まで力を地面に伝える必要があります。
クッション性のあるランニングシューズなどは力が十分に伝えきれないので、シューズは靴底が硬く平らな物を使いましょう。
パワーグリップも使うことをお勧めします。ただし、握力を鍛えたい人、パワーリフティング競技を考えている人は使わない方が良いです。
私のおすすめは、初めはパワーグリップ無しで行い、重量を増やしていく中で握力だけではバーベルを握り続けるのが困難になった時に使うようにします。
ウェイトベルトも基本的には使用しません。高重量で腹圧を高めるのが難しい時に使うようにします。
パワーグリップとウェイトベルトは基本的には初めのうちは使わない方が良いです。
浅指屈筋や深指屈筋などの前腕の筋肉と腹直筋などの腹部の筋肉を鍛えることができるので、同時に鍛えたい人は補助装備に頼りすぎないようにしましょう。
・ウェイトベルトやパワーグリップは高重量時に!
参考動画
以下にデッドリフトの参考動画を載せておきます。
この動画では以下のポイントを紹介しています。
・お尻を下げ過ぎない。(腕が地面に対して垂直になるように)
・背中を丸めない
・バーベルを身体から離さない。(バーベルは脚の上に来るように、鉛直方向に動かす)
・バーベルを持ち上げる前にしっかりと腕を固定する。(腕がたるまないようにする)
・フィニッシュ時に背中を過度に反らさない。
参考資料
今回もこちらの参考書を参考にさせていただきました。気になる方は読んでみてください。