目次
スクワットの種類
バーベルを使ったスクワットには2種類あります。バーを身体の前で担ぐフロントスクワットとバーを身体の後ろで担ぐバックスクワットがあり、基本的に皆さんがよくジムで目にするのはバックスクワットです。
今回のスクワットのやり方はバックスクワットで説明したいと思います。理由としましては、フロントスクワットより取り扱いやすく、効率よく脚を鍛えられるからです。
バーの担ぐ位置
バックスクワットではバーの担ぐ位置が2つあり、ハイバー(バーを担ぐ位置が上)でのスクワットをオリンピックスクワット、ロウバー(バーを担ぐ位置が下)でのスクワットをパワースクワットと言います。
オリンピックスクワット
オリンピックスクワットはバーを担ぐ位置が肩甲棘の上(首の付け根辺り)になります。肩甲骨の上にバーを乗せるようにして担ぐ感じです。
この位置で担ぐのはロウバーより肩甲骨の柔軟性が必要ないので、肩甲骨の柔軟性が硬い人でも楽に担ぐことができます。
そのため、初心者がスクワットをやろうとするとハイバーになっていることが多いです。
ただし、肩甲骨の上に乗せるため、高重量だとバーが食い込み、肩甲骨周りを痛める可能性があるため、高重量を扱うのが難しいやり方です。
パワースクワット
パワースクワットはバーを担ぐ位置が肩甲棘のすぐ下になります。
この位置は肩甲骨の柔軟性が必要になってきますので、慣れるまではバーのみで練習するか、ハイバーでスクワットを行いましょう。
ロウバーにするメリット
ロウバーでスクワットをするメリットはハムストリングス、大殿筋、内転筋群など、動員する筋量が多くなり、結果的に高重量でトレーニングができるからです。
ロウバーは重心を足の中心に持ってこようとすると上半身が前傾するため、股関節周りの筋肉の動員が増えます。
また、ロウバーは肩甲骨の上にのせるというよりも背中全体にのせるようにします。つまり、バーの重量がかかる面積が広くなるので、結果的に重量が分散して痛みを最小限に抑えることができます。
バーの握り方と幅
バックスクワットではバーをサムレスグリップ(親指がバーの上にのせる)で握ります。こうすることで、バーの重量がすべて背中にかかり、手首や肘に負担がかからなくなります。
イメージとしてはバーを背中と手でを挟み込むようにします。そのため、手のひらの中心にバーがくるようにしなくても大丈夫です。腕が長い人がそれをやってしまうと腕がかなり窮屈になるため、そういう人は母指球あたりでバーを抑えても構いません。
また、バーを握る幅は左右対称であれば、基本的に何cmを目安というのはありません。ただし、肩甲骨を寄せて幅を小さくすることで肩の筋肉が引き締まり、バーが背中に食い込まなくなります。
スタンス
スクワットのスタンスは特定の筋肉に刺激を入れるため、怪我の防止のためにも重要な部分です。
脚幅は踵を肩幅に開き、つま先が約30°外に向けます。脚幅は広すぎると内転筋群(太ももの内側の筋肉)が限界まで伸張され、狭すぎると太ももがお腹に当たるため、十分な深さまでしゃがみ込むことができなくなります。
セットポジションまでの流れ
ここからはいよいよスクワットを行うまでの手順を説明します。
1.バーを握り肩甲骨を寄せて体幹を固める
サムレスグリップで握り、肩甲骨を寄せてバーを安定させます。ラックからバーを持ち上げる前から体幹を固めます。(次で説明する呼吸で取り上げます)この時にスタンスはとらなくて大丈夫です。大事なのは上半身を安定させることです。
2.バーを持ち上げスタンスをとる
バーを持ち上げたら、2、3歩後ろに下がりスタンスをとります。この時、必ず後ろに下がった歩数と先に出した脚を各セットで統一しましょう。
1セット目では3歩でセットポジションまで移動したのに、2セット目では4歩でセットポジションまで移動すると、スタンスをとるまでの準備に時間がかかってしまいます。
バーをラックから外した時点で腹圧を高め、体幹を固定しているので時間がかかりすぎるとトレーニング中に腹圧が弱くなる恐れがあるので、必ず統一しましょう。
3.深くしゃがみ、姿勢を維持しながら立ち上がる
スタンスができていれば深くしゃがみ込むことができます。こうすることで、大腿四頭筋とハムストリングス、腓腹筋が互いに拮抗しあいながら伸張されます。
また、バーの軌道を鉛直で足裏の真ん中にバーの軌道がくるようにすれば、自然と背中が前傾し、股関節周りの筋肉の動員も増やすことができます。
バランス面で見ても踵やつま先に重心が偏った状態だとバランスをとるために無駄な力が必要になるので、足の真ん中に重心がくるようにしましょう。
立ち上がる時も常に姿勢は維持し、同時に動かすことが大切です。
お尻から先に上がれば重心がつま先に移動し、上半身を起こせば重心が踵に移動してしまいます。重心は常に足の真ん中(土踏まず当たり)を意識して行いましょう。
バーの軌道
バーの軌道はバーベルやダンベルを用いたトレーニングで重要な要素です。軌道が正しくないときは、フォームや動作に問題がある時です。逆に言えば、バーの軌道が正しければ自然とフォームや動作も問題ないということになります。
バーの軌道は常に足の中心を鉛直に通るように維持することが大切です。とはいっても身体の使い方を細かく考える必要はありません。頭で自分の動作をイメージするだけで大丈夫です。
あとは身体が勝手にバーの軌道を維持するために微調整しながら動いてくれます。
もし自分のフォームを確認したいときは、他の人にフォームをチェックしてもらったり、自分で動画を撮って確認して修正していきましょう。さ
膝の使い方
スタンスを正しく取ったとしてもしゃがみ込むときに膝の使い方が間違っていると、正しい動作でスクワットができません。
立った状態から膝が90°曲がるぐらいまでは膝は自由に動かせます。逆に膝が90°以上曲がってからだと膝は固定されそのまましゃがみ込むことになります。
必ず、しゃがみ込むときに膝が内側に入らないようにする必要があります。膝はつま先と同じ向き(=外に約30°向ける)にすることです。
膝が内側に入ると脚も内側に入り、深くしゃがみ込むことができません。そのため、大腿骨の内側と外側にある筋肉の関与を弱めることになり、脚全体を効率よく鍛えることができません。
ですが、大腿四頭筋をメインにスクワットをするのであれば膝が内側に入っても構いません。
膝が前に出すぎない
膝の使い方でもう一つ大切なことは膝が前に出すぎないことです。膝が前に出すぎるというのは、つま先より膝が前に出ていることです。
ですが、膝は多少つま先より前に出ても問題ありません。また、膝が前に出るぐあいは各個人の身体の部位の長さで変化するため一概にここまでとは言えません。
目安としてはつま先から鉛直方向に膝ではなく脛があれば膝が出すぎということになります。
膝が出すぎると問題になるのが、ハムストリングスや腓腹筋の関与が減ることです。
実際に自重でスクワットをする時に膝が前に出ないでしゃがみ込む場合と、膝が前に出ながらしゃがみ込む場合では、前者ではハムストリングスが常に張っているような感覚になると思います。
これは脚の筋肉が連携して膝の角度を保とうしている状態です。また、膝が前に出すぎると重心の関係から深くしゃがみ込むことができません。
もし膝が前に出すぎた状態で深くしゃがみ込もうとすると重心が前にいき、踵が浮く危険性があります。そうなればバランスを崩して怪我の可能性が高くなります。
しゃがみ込む深さ
しゃがみ込む深さによって脚の筋肉の関与する大きさがかわります。具体的にはハムストリングスや大殿筋などの筋肉です。
深さによって変わるスクワット
スクワットはしゃがみ込む深さで呼び名が違います。クォーター、ハーフ、パラレルなどがあります。この記事ではパラレル(太ももが地面と平行になる)以上の深さで行います。
基本的にはしゃがみ込む深さが深いほど筋肉が伸張され、また、動員する筋肉も増えます。
パラレル以下のスクワットをまとめてパーシャルスクワットと言います。パーシャルスクワットは膝と大腿四頭筋に負荷がかかるので、大腿四頭筋をメインに鍛える場合はパーシャルスクワットでも構いません。
しかし、下半身には大殿筋、内転筋群、ハムストリングスなど、多くの筋肉が複雑に入り組んでいます。それらの筋肉も同時に鍛えるためにはパラレルスクワットが適しています。
呼吸
スクワットやダンベルショルダープレスなど背骨の長軸方向に負荷がかかる種目のことをストラクチュラルエクササイズと言います。このエクササイズは正しいフォームと安定した姿勢をとらないと腰を痛める可能性があります。
それを防ぐためにも呼吸は大切な要素になります。ストラクチュラルエクササイズをする時は体幹を安定させるために腹圧を高め、腰が曲がらないようにします。
スクワットを例に取るとしゃがみ込む前に息を吸い、動作中は息を止め続け、動作が終わったら息を吐くというように行います。
この呼吸法をバルサルバ法と言います。バルサルバ法は筋トレ以外にも普段の生活の中で、重たい荷物を持つときなどに自然と行っています。
ですので、トレーニング中はそこまで難しく考えなくても大丈夫です。大切なことは体幹を固定することを意識してトレーニングをすることです。
その他
その他にスクワットをする上でサポートとなるアイテムを紹介します。必ずしも必要ではありませんので、高重量を扱えるようになってから揃えても問題ありません。
厚底で平たい靴
スクワットをするのにランニングシューズで行うのはおすすめしません。ランニングシューズという物は地面の衝撃を吸収して脚への負荷を軽減するものだったり、走りやすいようにつま先が地面から浮いていたり靴底が丸みを帯びていたりするものがあります。
これらは効率の良いスクワットの妨げになります。スクワットで大切なことは足元が安定しており、立ち上がる時に力を十分に引き出せることです。
リフターシューズやコンバースのような底が硬く平らな靴で行いましょう。
ウェイトベルト
ウェイトベルトは腹圧を高めるためのものです。
ベルトによって外から内側へ負荷がかけることで腹部の筋肉をより強く収縮させ、脊柱への圧力を高めることができます。
イメージをしてはウェストのきついズボンを履くとお腹が締め付けられて苦しくなるような感じです。その状態で腹筋に力を入れるとより腹圧を高めることができます。
ただし、ウェイトベルトを使うときはメインセットで一番負荷の大きい時や、ストラクチュラルエクササイズで腰を痛めやすい人以外が極力使わない方が良いと思います。
初心者の内は、腹部の筋力強化のためにもウェイトベルト無しで行うことをお勧めします。
ニーラップ
ニーラップは膝を守るためのものになります。膝の安定性や軽度の障害を抱えるリフターのトレーニングを支えることができます。
基本的にはニーラップは拳上重量を増やすためのサポートアイテムですので、膝に障害がない限りは基本的にはなくても大丈夫です。
注意点
注意点を以下にまとめます。怪我のないように行いましょう。
・バーの軌道が足の中心を通り、鉛直方向であること。
・足は肩幅程度に開き、つま先を外向きに30°にすること。
・膝はつま先の向きに、内側に入らないようにすること。
・パラレル以下の深さで行い、股関節と上半身を同時に動かすこと。
・高重量では必ず、補助バーか補助人をつけること。
まとめ
・スタンスは肩幅程度に開き、つま先は外向きに30°。
・膝はつま先と平行に。
・バルサルバ法を用いる。
・靴は靴底が平らで硬いもの。
・ウェイトベルトやニーラップは慣れてきてから使う。
今回は効率良く鍛えるスクワットの紹介でした。これらを参考に行ってみてください。
今回もこちらの参考書を参考にさせていただきました。気になる方は読んでみてください。